ロシアとウクライナの情勢の悪化によって、豪ドル(AUD)が多く買われています。豪ドルだけではなく、南半球のNZDドルも同様に買われています。
特に顕著なのが、ヨーロッパ系の通貨EUR/GBPが大量に売れて、南半球の通貨のAUD/NZDが買われているというのが現状です。
普段戦争や大きな災害などが起きたら、円やフランなどが買われますが、ドル円の相場に関してはほぼ動きはなく、EUR/GBPに対しての円は買われてはいますが、南半球のAUDやNZDに比べると円の買いの動きは限定的です。
では、なぜロシアとウクライナの情勢不安で円よりも、南半球のAUDやNZDの通貨が買われているのか推測を立てて解説をしていきたいと思います。
なぜ、南半球の通貨が買われるのか?
では、今現在のEUR/AUDとGBP/AUDのチャートを見ていきましょう。
【EUR/AUD】
【GBP/AUD】
どちらの通貨も1か月以上前から、下落のトレンドが急激に進んでいるのがわかると思います。
これだけAUDとNZDの通貨が買われる理由の1つが、ヨーロッパ大陸から離れているということです。
ヨーロッパ大陸では、ロシアとウクライナの情勢不安からEUR/GBPが売られて、遠く離れたAUD/NZDの通貨の方が安全資産と見なされて多くの買い注文が入っているのが現状の動きです。
金融市場は、今回のように予想しがたい事態に対して非常に脆弱です。誰もが「そんなバカなことが起こるハズがない」と思うようなことが現実のものとなる可能性が高ければ高まるほど、金融市場で資産を売却し一般的に言われる「安全資産」に資産を移し替えるという動きが加速します。
2022年年初にという時代に全世界の人が、まさかロシアとウクライナが「戦争」するなんて誰が思ったでしょう。多くの人が「戦争」はおきないと思っていたところで、実際に起きてしまった。
ヨーロッパ大陸はロシアからの天然ガスの供給に大きく依存しています。特にドイツは国内の天然ガスの供給量の約半分をロシアから輸入していますので、今後EUB(欧州中央銀行)が利上げをするのも厳しくなってきました。
EURが利上げができないとなれば、AUDとの金利は現状のままでEURが買われやすい地合いになりませんし、逆に天然ガス等のエネルギー問題から資源国であるAUDやNZDの通貨が買われやすい地合いがしばらく続く可能性が高いですので、現在のEUR/GBPのヨーロッパの通貨が売られて、AUD/NZDの南半球の資源国通貨が買われる動きはしばらく続く可能性が高いと思います。
こちらは2022年3月4日(金)のEUR/GBPに対してのAUDの通貨の強弱を表したチャートになります。
1日単位でもこれだけ、AUDが買われていることがわかると思います。
この流れは、まだしばらくは続きそうです。
日本円は買われないのか?
大きな戦争や、災害などが起きた際は「安全通貨」と言われる日本円が買われやすいが現状日本円は思ったほど買われていないのが現状です。
ウクライナに進行したロシアはアメリカと昔から仲が悪いですし、いまも敵意をむき出しにしています。そして日本とアメリカは同盟国ですし、日本とロシアは昔から北方領土の問題で揉めています。また、日本政府は新型コロナの影響で財政赤字が続いておりますし、原油価格の高騰などによる輸出のインフレ化を懸念すれば、今現在で円が買われていくという動きはかなり限定的になりそうです。
現在のAUDJPYの通貨を見て見ましょう。
今現在はかなりAUDが買われて、日本円が売られているのがわかると思います。
資源価格が高騰すると、貿易収支にとってはかなりマイナスになります。そうなると金融緩和の長期化と円が売られる要因が多くなりますので、しばらくはAUDが買われて、円が売られていくという流れが続いていきそうです。
今現在の世界情勢を見て、すぐに世界の経済が以前のように戻るとは考えにくいです。ロシアとウクライナの情勢も更に悪化することが考えられますし、最悪は核戦争になるかもしれません。
そうなると、今以上にヨーロッパ系の通貨が売られて、今現在安全資産とみられるAUDやNZDの通貨が買われていく動きが加速する可能性が高いですので、今後の動きに注目していきたいと思います。
AUDやNZDと同様に現在買われているのが「GOLD」です。「有事の金買い」と言われている通り、情勢の悪化が進むにつれ、資産を売却して金を購入する動きが進んでいます。
まとめ
現在AUDやNZDの通貨が買われやすい地合いが続いている要因は、ヨーロッパから遠く離れた南半球の国であることそして、AUDやNZDが資源国であるという要因が大きいと思います。
そして、ロシアとウクライナの情勢の悪化が懸念されているヨーロッパのEURやGBPは一気に売られていますし、この動きはまだしばらく続きそうです。
今後の世界の動きに注目していきましょう。